9年目のQuarantine
気がつけば8年経っていた。サイゴンへ来て住み着き、あれやこれやと生きていたら8年経っていた。
2,3年前のPostに書いた家にまだ住んでいる。猫は増えた。
当時の同居人はパートナーとの間に子供ができて結婚したので家を出て今は嫁さんの家(一軒家)に嫁の弟と一緒に暮らしている。玉の輿だ。
一部屋空いてしまったのでスタジオにでもしようかな、と思って色々と手を出し始めたが、家賃の負担が一気に上がったので案外手元に現金が残らなくなっており、あまり進まないままだ。
少し生活を見直す必要があるように思う。冷蔵庫が壊れて購入し直したりしていて家も出ていないくせに割と出費がかさんでいる。
思えば去年の4月ごろからじわじわとベトナム国内でも話題になり、隔離やらなにやらが始まった謎の疫病騒動がここまで長引くとは思いもよらなかったものだ。
そして、ここまでうまく封じ込め作戦をやってきていたベトナムにもとうとう、ウイルスが飛び込んできて、大きく広まった。
僕が住んでいるサイゴン市内でも毎日3桁台の患者がでるようになった。
欧州のように外出制限こそはないものの、社会隔離という名で都市間移動は制限され各種飲食店はすべて持ち帰りとデリバリーのみになり、最終的には不要不急の店舗は営業停止、タクシーも台数制限がかかり街は静寂に包まれた。
っていうとかっこいいんだけど実際はそこまで静寂でもない。
今回は今までにない勢いだしこのウイルスもなんだか新種だが変異種だかってやつで(当初ベトナム・オリジナルブレンドのすげえやつ。と報道されたがそれは勘違いでいわゆる”普通の”変異種でデルタ株っていうやつらしい)なかなかやばそうな雰囲気はあるものの、1年以上にわたる度重なる抑圧で多くの市民はどうにももう緊張の糸が切れてしまっているようにも見える。ワクチンとやらの摂取はだんだんと進んではいるようだ。(我が家のもとにはとくにそんな話はやってこないが)
5月の連休はパートナーの実家を訪ねてハノイまで遊びに行ったがそのタイミングで北部で市中感染が発生し、帰ってきてからも「直近で北部に行ってた人は出社しないでね」と政府から会社にお達しがきてしまった。
そこから3週間後にはホーチミン市全体は感染拡大による社会隔離に突入し、結局ほぼそのまま引き続きの在宅ワークとなった。
そんなこんなですでに2ヶ月ほど、散歩とスーパーマーケット程度の外出(現在、人と集まることも禁止されている)程度でしか外に出ていない状況だ。
毎日猫2匹に邪魔されながらオンラインで仕事をし、ZoomやらTeamsやらでオンラインミーティングを繰り返し、毎日大量に飛んでくるチャットでのメンションをさばいている合間にちょこちょことタスクを潰しているといつの間にやら結構夜になってるなって感じで飯を食う。大体8割くらいは自炊している。
夜は週末は映画見たり音楽作ったり、マンガを読んだり、映像編集や音楽制作、ミックスダウン・マスタリングのお勉強をしていると一日が終わる。
なんだかんだで結構忙しい。趣味が多いので。
案外「暇だからXXしよう!」みたいなことにもならず普段とあまり変わらない生活をしているだけで毎日が過ぎていく。
ただ、去年は未知のウイルス騒動ではじめて経験することも多く、現実感がないままの隔離生活やリモートワークで日々新鮮な気持ちがあったが、もう今回はそんな新鮮味もなく家の中で平坦な日常がずっと続いていく感覚に覆われている。
疫病騒動に、飽きたのだ。
流石にこの一年間家にいる時間が増えているので自宅の作業環境はじわじわとアップデートしていてかなり作業のしやすい環境が出来上がってきた。
今は寝室に作業スペースがあるがこれをそのまま元同居人の部屋に移動しようという計画を建てており、今日はそこにあったバカでかいキングサイズのベッドを解体して掃除をしていたら一日が終わってしまった。
汗だくになって水シャワーを浴びたらサウナに行けない辛さが2%くらい解消された。
スタジオモニタースピーカーをちゃんと置きたいしちゃんと鳴らしたいな、と思うとそれが一番良い方法に思えた。まぁ高いのでスピーカーを買うのは年末くらいになりそうだけど。
僕は海外(主に日本)向けのソフトウェア開発をしている会社の会社員なので影響の少ない立場にいるから実感がいまいちなかったがこんかいの社会隔離では、どうやら失業者や給料が満足に出なくなってしまったという人はかなり出ているようだ。
そんな中でなぜか外国人のビザやWork Permit発行ルールが変更されて多数の在住外国人が帰国を余儀なくされている。
すでに帰国、または直近で帰国をする予定の友人が国籍問わずあまりにも多く、毎日Facebookには「ベトナムを離れることになった」というエモいポストとMoving Saleの情報が流れてくる。(Moving Saleに張り付いて色々と買いとっている)
あまりにも急で、そして厳しい。
ベトナムで出会った外国人同士のカップルなんかもいるわけで、この状況でみんながかんたんに自国に帰れるわけでもない。
かといってこの疫病騒動のさなかで外国人を受け入れている国も現時点ではかなり限られている。
そして、この数ヶ月の間に繰り返された社会隔離によって職を失ったり、収入が減っている人は多くチケット代が捻出できない人も、いる。
おそらくここからしばらくはどうにもならずオーバーステイの外国人がかなり出てしまうだろう。
こればっかりは本当にどうなるのか、経済の問題だけでなく治安の問題も心配だし、ベトナムは良いところだ、暮らしやすい、ベトナムでの暮らしが好きだと言いながら長らく住んでいたはずの人達が失望しながら、そしてこの国に対して複雑な思いを持ちながら出ていく姿を何人も見届け続けるのは正直、辛い。
こういった色々なことが起きている複雑な状況のなかで9年目を迎えた。
どんな状況でも毎日の人生をやってゆくしかない。